ホワイトニングについて調べているうちに、自分の歯にホワイトスポットがあることに気づいた──そんな話を前回のコラムで書きました。あれを書き終えたあと、結局またソワソワしてしまって、夜中にスマホで歯まわりのワードを追いかけていたんです。
そうしたら今度は「ブラックフィルム」というワードに行き当たってしまって。……ん?ブラック?黒いシールを歯に貼る?という第一印象で、正直、私はけっこう身構えました。同じように「名前で一瞬びっくりした」という方、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
結論から書くと、ぜんぜん黒くなかったんです。むしろ、歯を白く、形よくきれいに整えるための、とても真面目な審美治療のお話でした。今日はその「気になっちゃった」の続きを、一緒に整理してみたいと思います。
「ブラックフィルム」、ぜんぜん黒くないらしい
検索結果のページを開いた瞬間に、透明感のある白い歯の写真が並んでいて、「あ、これ、わたしが想像していたものと全然違うやつだ」と認識を改めました。
調べてみると、ブラックフィルムは韓国発祥の審美歯科治療の一種で、薄いセラミック素材を歯の表面に貼り付けて、色と形を整える方法なんですね。厚みは0.1〜0.2mmほど。表現としては「フィルムのように」貼るのだとか。たとえるなら、爪に薄いシールを貼って色や形を変えるネイルチップが、歯の世界にもやってきた──そんなイメージでしょうか。
なぜ「ブラック」というネーミングなのかは、いくつかの解説サイトを横断しても、はっきりとは書かれていませんでした。気になりますよね。販売員時代にも、「黒」や「炭」を冠した商品が「実際は黒くない」というケースはよくあって、お客様から「結局、何が黒なの?」とご質問を受けることが少なくなかったんです。商品名の不思議さは、業界を越えて似たところがあるなあと、ちょっと笑ってしまいました。
開発者は韓国のキム・ヒョンモ医師という方で、日本国内で正規に施術できるドクターは現時点でごく少数にとどまる、と紹介しているクリニックもありました。新しいけれど、誰でもどこでも受けられるわけではない治療──そんな立ち位置のようです。
またしても「削らない」がキーワードでした
前回のホワイトスポットの記事を書いていたとき、私はアイコン施術の「削らない」という設計に、心からホッとしたんです。私自身、もともと痛みにかなり弱いタイプで、歯を削るとか、表面を整えるとか、そういう響きが本当に苦手で。だからこそ「削らずに表面のミネラルを補う」という考え方には、思わず前のめりになってしまいました。
そのときの「削らない」というキーワードが、ブラックフィルムでもまた看板に出てきていて、これは嬉しい再会でした。
ここで安心してほしいのが、ブラックフィルムは、通常のラミネートベニアとは設計の入口が違うという点です。従来型のラミネートベニアは、歯の表面を0.3〜0.5mmほど削ってからセラミックを貼るのが前提でした。形と色を変える代わりに、自分の歯のエナメル質を少し減らすことになります。
ブラックフィルムでは削る量が0〜0.1mm未満まで抑えられていて、通院回数も3〜5回から短期間に圧縮、麻酔も基本的に使わない設計になっているそうです。文字にすると小さな違いに見えますが、「自分の歯を物理的に減らさなくていい」「麻酔の注射からもいったん解放される」というのは、痛みが心配な方にとっては、本当に大きな心理的な差なんですよね。
販売員時代、ホワイトニングのご相談で来店されるお客様の中にも、「白くしたいけれど、歯を削るのはどうしても怖い」とおっしゃる方が、本当にたくさんいらっしゃいました。あの頃に「削らない選択肢」のラインナップがもっと整っていたら、私はもっと自信を持ってお客様におすすめできたのかなあと、画面を見ながらしみじみ思いました。
ホワイトニングやセラミックの「もう一段先」にある選択肢
少し整理してみますね。歯の見た目を変える選択肢は、ざっくり3つの段階に分かれています。
ホワイトニングは、歯の色を白くするケア。形は変えられません。従来型のラミネートベニアやセラミッククラウンは、色と形の両方を変えられるけれど、歯を削る前処置が必要です。ブラックフィルムは、その間に新しく割って入って、色と形を変えるのに歯はほぼ削らない、という立ち位置を取っています。
注目したのは、適応とされている悩みの一覧です。歯の色や形のコンプレックスはもちろん、すきっ歯、矯正後の後戻りの修正、そして「ホワイトニングでは白くならない歯」も対象に含まれていました。前回のコラムを書いた私としては、この最後のひと言にちょっと反応してしまったわけです。ホワイトスポットを含む「白くしたいけれどホワイトニングでは均一にならない」悩みも、選択肢として並んでくる可能性が見えてきます。
一方で、重度の歯並びの乱れ、著しく突き出た前歯、骨格的な問題があるケースなどは適応外、と書かれているクリニックもありました。「誰にでも当てはまる魔法のフィルム」ではない、というのは、ちゃんと知っておきたい線引きです。
ホワイトニングだけ調べていたら、私はこの3段目の選択肢にたぶん出会えませんでした。なんだか、化粧品売り場でお客様が「保湿クリーム」を探していらしたのに、お話を伺ううちに「実はあなたに必要なのはクレンジングの見直しでしたね」と着地する、あの瞬間に似ているなあと感じます。一つずつ確認していくと、入口だった悩みとは別のところに本当の答えがある、ということって、案外多いんですよね。
料金とリスクを見て、いったん深呼吸した
ここまでは「へえ、いいじゃない、こういう選択肢があるんだ」とテンション高めで読んでいたのですが、料金のページに進んだ瞬間に、私はそっとマグカップを置きました。
クリニックによって設定の幅はあって、1本あたり11〜22万円のレンジで提示しているところもあれば、2本で55万円・6本で165万円といった価格表を掲げているところもありました。本数が増えるほど合計はもちろん上がっていくので、「気軽に試す」というより、「腰を据えて取り組む審美治療」と捉えたほうが落ち着いて検討できそうです。
それから、デメリットの記載もきちんと目を通しておきたいところでした。具体的には、強い衝撃で破損する可能性があるため硬いものを前歯で噛み切るのは避けたい、歯ぎしりや食いしばりがある方は事前に相談が必要、定期的なメンテナンスにも費用がかかる、健康保険は適用外で全額自己負担になる──といった点です。10年以上の使用を見込めるとされる一方で、その期間ずっと「丁寧に付き合う」前提の治療なんだなと、しみじみ理解しました。
それでも、焦らなくて大丈夫です。クリニックによっては10年保証や、装着後6か月以内の無償やり替えといった制度を案内しているところもあって、「決して安くはないけれど、入りっぱなしの値段ではない」ということは伝わってきます。
私自身、今すぐ手を伸ばす選択肢ではありませんが、「いつか歯のことで本気で悩んだときに、こういう道もある」と知っておけたのは、ホワイトニングだけで考えを止めていた頃の自分よりは、少し前に進めたような気がしています。
まずはお医者さんに見てもらうところから、一緒に始めよう
「白い斑点」から始まった私の検索が、最終的に「黒くないフィルム」に着地するという、なんともおもしろい遠回りでした。気になり始めると本当に止まらないですよね。私もまったく同じです。
それでも、結論はやっぱり前回と同じところに戻ってきます。ネットで読んで一人で「これだ」と決めてしまうのは少し怖いので、まずは自分の歯の状態を、歯医者さんに見てもらうところから。ホワイトニングで十分なのか、ホワイトスポットのケアが先なのか、それともラミネートベニア系まで検討する段階なのか、そもそも自分の歯並びがブラックフィルムの適応に入っているのか──そこを判断できるのは、目の前で歯を見てくれる専門家だけです。
完璧な答えを、自分一人で出そうとしなくて大丈夫。調べものは「選択肢を増やす」ために使って、決断は「プロと一緒にする」。前回からの私のスタンスは、今回も変えずに置いておこうと思います。
気になり始めたあなたの一歩も、まずは勇気を出して予約の電話、というところから。
